とりあえずSP-TDCとは別なので、新しい書庫にしてみました。
どんなものを作りたいのか、SP-TDCとはどこが違うのか、そこら辺を書いてみようと思います。
まずは点火回路まわりですね。
SP-TDCの点火方式はフルトラとかTCIとかいわれる方式です。
その名のとおりで、IGコイルに通電、遮断するのにトランジスタを使った方式ですね。
普通はパワートランジスタを使うんですが、ご存知のとおりSP-TDCはパワートランジスタではなく
MOS-FETです。
最近はMOS-FETレギュレーターとかがあるので、大ざっぱにパワートランジスタよりMOS-FETのほうが
性能が良さそうってのはおわかりですよね。
フルトラの場合、プラグの火の強さを決めるのはもちろんIGコイルの性能によるところが大きいんだけど、
実はそれだけではありません。
ハーネスにも大きく影響されますし、イグナイターの性能も大きく影響します。
イグナイターの性能というのが、火花の強さだけに関していえばパワートランジスタそのものの性能と
パワートランジスタを駆動する回路によるわけです。
なにが良ければいいのかというと、通電・遮断の速度が速いことと大電流を流せることです。
通電・遮断の速度が速いとIGコイル一次側の逆起電圧が高くなるので、昇圧回路をつけたのと
同じ効果になります。
電流を流せる量が多ければ、IGコイルの性能をフルに引き出せるので、これまた火花の強さにつながります。
MOS-FETはスイッチング速度が速いし、MOS-FET自体の抵抗値が低いので
より多くの電流を流せるので、パワートランジスタより良いということになります。
んじゃSP-TDCはMOS-FET使ってるんだからいいじゃん! となりますが・・・
現実にはそうはいかないんですね。
IGコイル一次側の逆起電圧が高くなると、ノイズがものすごいことになって誤動作につながるし
MOS-FETだけよくても、車体に装着したときのトータルバランスに大きく左右されるんです。
てことで、SP-TDCの点火回路はMOS-FETの駆動回路で加減してフル性能は出してないです。
フル性能にすると、装着の仕方でノイズが出て誤動作しちゃうんです。
また、配線によっては性能が出なくなっちゃうこともあります。
フル性能にしてみたいけど、そうすると配線によってはノイズで誤動作しますって製品になっちゃうので
製品である以上、そうはいきませんよね。
てことで、MAXパワーを出せずにそこそこパワーにしてあるってことになってます。
これでも昇圧回路は必要ない程度の性能にはなってるんですよ。
実際、抑え気味のSP-TDCでも、ノーマルイグナイタよりはるかにIGコイル一次側の逆起電圧が高いから
ノーマルのメインハーネスを使ったりするとノイズで誤動作することもあります。
ようするに、配線の仕方ひとつで性能に大きな差が出てしまい、あげくには誤動作する場合もあるので
フルパワーにできないのです。
IGコイルの接続をざっくり図にすると、こうなります。
だいたいこんな感じになってて、IGコイルにはバッテリー電圧がかかると思われますよね。
ところが、ハーネスはメインキーやキルスイッチなどいろんなところを通ってくるので抵抗値をもってます。
なので、IGコイルにつくころには電圧は下がっちゃうわけです。
まして旧車となるとハーネス自体が劣化してるので、IGコイルには10Vくらいしかかかってないってことも
よくあります。
と、ここまではちょっと詳しい方ならご存知ですよね。
が、意外と盲点になるのは、同じことがアース側にも起きてるってことなんです。
それぞれの概ねの抵抗値と、かかってる電圧を入れると↓こうなります。
抵抗値は大ざっぱなものです。
バッテリーからIGコイルまでは、メインキーやキルスイッチを経由するんで旧車なら2Ωもありえるし
新車でも結構な抵抗があります。
この抵抗のせいでIGコイルにいくころには電圧が下がっちゃって8.1Vとなっちゃいます。
てことでIGコイルに8.1Vかかってるかというと、そうはいかないのです。
抵抗があるところ全てに電圧が分散されるので、IGコイルにかかる電圧は5.8Vしかないのです。
IGコイルの抵抗3Ωってのはノーマルコイルの場合で、これがウオタニのような高性能なコイルになると
1.7Ωくらいになります。
コイルの抵抗が低いのは良いことなんだけど、逆に電圧はよけい他のハーネスにとられる割合が高くなって
コイル自体にかかる電圧は下がっちゃいます。
つまり高性能なコイルほど、ハーネス等のわずかな抵抗値が問題になってくるんです。
それに、見落としがちなのが図の一番下、イグナイターからバッテリーマイナスに戻るところです。
実際にはイグナイターのアース線ですね。
これが車体アースやバッテリーターミナルじゃなく、メインハーネスにつないでしまうと
多かれ少なかれこんなことになってしまいます。
メインハーネスが劣化してたりすると、ここでロスするのもばかにならないのです。
この図でいうと、IGコイルに電源を供給する配線をバッテリーからリレーを介して直接接続して、
アースをメインハーネスを介さず直接バッテリーターミナルか車体アースすると
3.9V+1.9Vが節約され、IGコイルにかかる電圧は約5.4V増えるんです。
SP-TDCはリレーも内蔵してますし、アースは車体アースを推奨してますが
もし全てメインハーネスから配線したとすると、こんなにもロスしてしまいます。
こんな感じで、IGコイルもイグナイターも高性能になればなるほどその他のハーネスの問題が
大きくなるんですね。
配線をちゃんとすればいいじゃないかって話ですが、設置場所の問題でメインハーネスを
使うしかない場合もあるので、SP-TDCの点火回路だけむやみに性能を上げられないのです。
本当はハーネスまで全て制作してカプラーONにして、ハーネス自体でもノイズ対策をしたうえで
MOS-FETの性能をギリギリまで上げたいところです。
ハーネスのノイズ対策も、単にシールドしたり1点アースすりゃいいってもんじゃないので
いろんな車体に装着することを考慮すると、これがなかなか出来ないことなんですね。
SP-TDCの性能だけ上げても、扱いにくいことになってしまうんです。
つまり、ハーネスも含めて車体に装着する全てをやらないと、点火回路のMAXパワーを出せないって
ことなんですね。
てことで、そこら辺の限界にチャンレンジです(^^)b